Dr.中川のがんから死生をみつめる:/7 「性」持つものの運命
Dr.中川のコラムのご紹介です。
人間の細胞分裂の回数が50回と定められているとは!
しかし、途中で病気もせずに細胞分裂の数だけ生きられるなら天寿をまっとうできたことになりますね。
今回もためになるお話です。
Dr.中川のがんから死生をみつめる:/7 「性」持つものの運命
<以下、記事の引用です>
Dr.中川のがんから死生をみつめる:/7 「性」持つものの運命今回は、私たちに「性」があることが「死」を意味する、という少しショッキングな事実についてお話ししたいと思います。
人間のDNAは「線状」で、細胞分裂でコピーされるたびに両端が短くなるため、分裂の回数に限界が存在します。人間の場合、約50回分裂すると寿命を迎えます。では、大腸菌のようなバクテリアが無限に分裂できるのはなぜでしょうか。バクテリアなど原核細胞(DNAを包む膜がない細胞)のDNAが、輪のような「環状」をしているからです。環状であれば端がなく、分裂しても短くなりません。DNAが環状から線状になったことが、私たち人間に寿命をもたらした理由といえます。
さて、私たちのからだの細胞(体細胞)は、卵子と精子が合体した受精卵が出発点です。卵子や精子が持つDNAは、それぞれ1セットです。受精卵からできた体細胞は、父と母からDNAを1セットずつ受け継いで、2セットのDNAを持ちます。一方、大人になって生殖細胞を作る際、2セットのDNAが1セットに戻されます。この仕組みを「減数分裂」と呼び、オスとメスがかかわる「有性生殖」の基本となっています。
ところが、減数分裂ではDNAの形が環状だと都合が悪いらしいのです。有性生殖する生物は子孫を残すため減数分裂に都合のよい線状のDNAを持つ、つまり細胞に寿命があることが運命づけられているのです。
ここで重要なのは、生殖細胞には、コピーによって短くなったDNAの端を元の長さに戻す能力があることです。前回説明した体細胞からつくられたクローン動物は、生まれながら短くなったDNAを持っていましたが、生殖細胞の受精から生まれる赤ちゃんは、0歳の細胞を持って生まれてきます。真核生物の宿命である「老」や「死」が、「性」によって克服され、再び0歳からの時を刻むのです。
有性生殖のもう一つの利点は、減数分裂や受精の過程を通して、一つとして同じではない多様な子孫を残せることです。性を持つことで、私たちは世界で唯一のかけがえのない存在となり、同時に、死を運命づけられたのです。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)
