ドクター中川先生の公開講座-その2 のご紹介です。
今回はパネルディスカッションの部分が登載されています。
乳がんの山田邦子さんが、全摘出か温存療法かの選択をした時のお話をしてくれています。
がんの体験談は聞いておく必要がありますね。
<特集:ドクター中川の続“がんを知る”公開講座(その2止) 体験談/問題提起ほか>
<以下、記事の引用です>
特集:ドクター中川の続“がんを知る”公開講座(その2止) 体験談/問題提起ほか■パネルディスカッション
◆中川恵一さん/山田邦子さん/永江美保子さん
◇「死」を考えて生きる--中川恵一さん
◇選択のため情報提供--永江美保子さん
<18面からつづく>山田 家に帰らない人がいるんですか。
中川 「即入院、即治療」と言って、入院させたがる医師がいるんです。しかし、治療の選択肢はいくつもあります。また、手術と放射線治療の治癒率が同じがんは、たくさんあります。喉頭(こうとう)がん、早期の肺がん、食道がん、子宮頸がん、前立腺がん、乳がんもそうです。情報を集めて自分らしい治療を受けるためには、いったん頭を冷やす必要がある。そのために、家に帰ってほしいのです。
永江 先ほど紹介した人間ドックから3カ月後にがん告知を受けたという方も、頭の中が真っ白になり、家に帰ってやっと正気に戻ったと話されていました。自身がまずがんと向き合い、考え、そして選択をする時間は、とても大切だと思います。
斗ケ沢 山田さんは乳房温存療法(乳房全体を切除せず、がんとその周辺だけを切除する治療法)を選ばれましたね。どのように決めたのですか。
山田 先生が「温存か全摘か、どうしますか」と聞くのです。そんなの分からないじゃないですか。だから、「先生は、どう思いますか」と切り返しました。すると、「僕なら、こうしたいかな」と言ってくれました。ほかのスタッフも同じような意見だったので、あっているのかなと思い、選択しました。
斗ケ沢 患者に判断させるということは、どうなのでしょう。
中川 僕が医師になったころは、告知はほとんどしていませんでした。医師がすべて治療方針を決めていて、今はそれが批判されています。しかし、僕はそういう考え方が少しはあってもいいのではないかと思うようになりました。若い医師は「こういうデータがあります。さあ、あなたが治療法を決めてください」と言う。そんなこと、できるわけないですよ。医師に優しく肩を押してもらうことがあってもいい。一方、患者さん自身の考えを出していただくことも必要です。まれですが、「がんができたお乳なんか温存したくない」という方がいますから。
山田 私もかなり悩みましたよ。私はがんが左右に計三つあったものですから、検査の途中、「両方全部切ってください。そうすれば、おっぱいに関するがんにならなくなり、気分がさっぱりするから」と言ったことがありました。ところが、先生から「あるものはあるというのが正しい姿で、温存療法ができる時は残した方がいいですよ」と言われ、温存にしました。
中川 日本は戦後、胃がんが多く、胃がんは手術向きでしたから、「がん=手術」との図式ができました。乳房の全摘は先進国の中で一番最後までやっていました。子宮頸がんの2期の場合、欧米では8割が放射線治療、日本は8割が手術です。手術と言われた時、放射線治療は可能なのかどうか、ということを考えていただきたい。
斗ケ沢 がんを抱えながら働く人々が増えた一方、職場を失う人も多いと聞きます。
永江 東京都内の30代の乳がん患者2人に話を聞いた時、共通におっしゃっていたのは「乳がんは切ってからが闘いの始まりだ」ということでした。職場復帰しても、投薬や通院治療が5年ぐらい続きます。薬の副作用もあります。職場の理解が得られないと、仕事を続けることがつらくなる。仕事を続ける理由は生きがいということもありますが、生活のためや治療にお金がかかるという面もあります。一方、がんを経験された方の3~4割は仕事をやめたり、転職していると聞いています。
斗ケ沢 肺がんを経験され、医師として働き続けている加藤大基さんが会場にいらしています。
加藤 3月まで非常勤で仕事をしていたのですが、4月から帝京大の放射線科に勤務しています。手術(06年)後は、定期的に検査を受けています。自分ががんになり、死ということを考えるようになりました。最初は気が重かったのですが、再発するかしないかは結局、誰にも分からない。がんで死ぬ確率が一番高いのだろうけど、何で死ぬかは分からない。いつかは死ぬと思うと、その日その日を大切にしたいと考えるようになりました。
中川 「今を生きる」という感覚は、死を明確に意識したがん患者さんが一番持っているのではないでしょうか。東大病院などが実施している、がん患者さんの死生観についての調査からも分かりつつあります。
斗ケ沢 最後に一言ずつお願いします。
永江 肺がんになったスケート選手の井上怜奈さんは治療を選択する際、肺を切除すると肺活量が落ちてスケートを続けられないから、放射線と抗がん剤による治療を選んだと話していました。治療を選ぶことは生き方を選ぶことです。誰でもがんになる可能性があるのですから、検診や治療の選択肢などのさまざまな情報を知っていただきたいし、情報を提供することに努めたいと思っています。
中川 「日本人ががんについて知らないのは、死ぬということを考えていないからだ」と思います。生や死について考えることが豊かに生きるためには大切です。毎日新聞で連載中の「がんから死生をみつめる」で、この点について考えていきたいと思います。
斗ケ沢 山田さんは本業が忙しい中、ボランティアでスター混声合唱団の活動に取り組んでいます。それを最後にお話しください。
山田 1回やってみようという試みだったのですが、患者さんから「ありがとう。次はいつですか」と言われ、1年続きました。自分たちも元気になり、だんだん使命感が芽生えてきました。大切に続けていきたいと思います。
■体験談
◆山田邦子さん・タレント
◇人生も病気も支え合い
乳がんの手術を受けて2年、こんなに元気になりました。何も病気をしたことがなく、初めての病気ががんでした。そして、元気になった恩返しをできないかと思い、「スター混声合唱団」という活動を始めました。芸能人にも、たくさんがんの体験者がいます。そんな人の元気なところを見てもらおう、そして悩んでいる人を励まそう、と考えました。最初、(ジャーナリストの)鳥越俊太郎さんに「やる?」と聞いたら、「やろうよ」って。大腸がん、肺がん、肝臓がんになっても、元気で頑張っている鳥越さんは、励みになります。倍賞千恵子さんは、私より5年ぐらい前に乳がんになりました。同じ病の人はすごく支えになりますね。大先輩ですが、優しく「大丈夫だよ」と言ってくれました。
検査はよく分からない検査ばかりでした。エコー(超音波検査)やマンモグラフィー(乳房専用X線撮影)、MRI(磁気共鳴画像化装置)、CT(コンピューター断層撮影)。初めてMRI検査の部屋に行ったときは、ロケットかと思いました。中は狭いし、中に入ると、「ビーン、コンコンコン、ガシャンガシャン」と鳴り、何されているんだろうって思いました。検査だけで1カ月半。私は「手遅れになってしまうのでは」と、やきもきしました。私に合った治療法を調べる大切な期間だった、と後で分かったのですが。
元気になったといっても、がんですから終わりがありません。こんなに元気でも、せきが出ると「再発したのかな」、おなかが痛いと「転移したのかな」と思います。でも、今は、がんを背負いながら、支え合いながら、がんと一緒に生きる時代です。テレビでは、やたらと、がんで死ぬ人が出てきます。「がん=死」、最後まで痛がって死ぬというのが好きなんです。
ところが、本当は最後まで痛いなんてことはありません。痛み止めを使った方が長生き、というデータがあるのですから。私は「暗いのは嫌、明るくやっていこう」と、スター混声合唱団の活動をしています。皆で歌うと、「支え合っているなあ、人生も病気もそうだなあ」と感じます。合唱団結成から1年、サポーターの募集も始めました。これからも私たちの活動を、よろしくお願いします。
■問題提起
◆永江美保子さん、アフラック・マーケティング戦略企画部付帯サービス企画課長
◇患者の不安に応え
アフラックは1974年に日本で初めて、がん保険を開発しました。当時は、がんを告知されることが少なく、がん保険のことを話すと、「縁起でもないことを言うな」などと言われたそうです。ですから、保険の話よりも前に、一人でも多くの方にがんについて知っていただくことが必要になり、それが私どもアフラックの出発点となりました。今は治療の選択肢が増え、社会保障制度も変わりました。07年にはがん対策基本法が施行され、国ががんに関する政策を大きく取り上げるようになりました。長期入院ではなく、ご自身の生活を続けながら、通院で闘病するという方も増えています。
一方、今も変わらないのが、がんになった皆さんの不安です。経済的負担を伴う、ということも変わらない問題です。経済的な負担を軽減する手段の一つとして、保険は有効だろうと思います。
厚生労働省の研究班の調査によると、がんになった方の悩みは、不安などの心の問題が多くを占めます。そして後遺症、仕事などが続きます。私たちが耳にする、がんを経験された方の悩みには、治療法の選択や必要な情報の欠如、医師に自分の思いが伝わらない、などがあります。
これらの不安に応えるため、私たちは、がんの方への心のケア、相談サービスの提供、がんについて知っていただくセミナーや展示などの活動に取り組んできました。情報を提供することも、がんの方への大切な支援の一つなのです。
がんを経験された方の言葉にはたくさんのヒントがあります。当社のホームページに開設している、がん啓発サイト「アフラック生きる.com」では、鳥越俊太郎さん、フィギュアスケート選手の井上怜奈さんをはじめ、がんを経験された方々の生の声を紹介しています。
今後も、がんを知っていただく活動のお手伝いを通じ、がんを知る大切さ、意義について皆さんと考えていきたいと思います。
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公開講座総合司会、本特集まとめは永山悦子、写真は手塚耕一郎が担当しました。
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■人物略歴
◇なかがわ・けいいち
東京大医学部医学科卒後、同学部放射線医学教室入局。同教室助手、専任講師などを経て現職。03年東京大医学部付属病院緩和ケア診療部長(兼任)。著書は「ドクター中川の“がんを知る”」(毎日新聞社)など。毎日新聞くらしナビ医療面で、コラム「がんから死生をみつめる」を連載中。厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」座長。==============
■人物略歴
◇ながえ・みほこ
アフラック・マーケティング戦略企画部付帯サービス企画課長、がん啓発担当。1988年入社、東京都内の営業支社、商品開発部、営業教育部などを経て現職。厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」委員。
