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Dr.中川のがんから死生をみつめる:/5 限界ある細胞分裂

Dr.中川のがんから死生をみつめる:
5.限界ある細胞分裂

中川先生の連載コラムのご紹介です。
下記にURLをリンクしましたので勉強してください。

Dr.中川のがんから死生をみつめる:/5 限界ある細胞分裂
<以下、記事の引用です>


Dr.中川のがんから死生をみつめる:/5 限界ある細胞分裂

 心臓の細胞は、原則として生後は分裂しないため、心臓にはめったにがんができないと前回お話ししました。脳の神経細胞も同様です。このため、脳や心臓の細胞が、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などで死ぬと、細胞分裂で補えないため、私たちは生きていけません。ただ、脳や心臓をいくら守っても、「不老不死」は得られません。これまでに最も長生きした人は、1997年に122歳で亡くなったフランス人のカルマンさんという女性、といわれています。そして、この120歳が人間の「最大寿命」と考えられています。

 これは、私たちのからだの細胞(体細胞)が、無限に細胞分裂を繰り返せないことが原因です。動物の細胞に栄養を与えて培養すると分裂を繰り返しますが、その回数には限界があります。人間の胎児の細胞は、約50回分裂するとそれ以上分裂しなくなり、新たな細胞が供給されなくなります。成人の細胞は、あと約20回しか分裂できません。

 つまり、私たちの細胞は一定の回数しか分裂できず、分裂が止まると、その臓器は死ぬことになります。このため、脳や心臓以外の臓器にも寿命があるのです。細胞が分裂できる回数は種によって異なり、回数が多い動物ほど長生きをします。寿命が2年のハツカネズミは10回、寿命が100年のガラパゴス亀は約100回分裂します。

 なぜ、細胞分裂の回数に限界があるかは、次回くわしくお話ししますが、人間を含む多細胞生物の命に限りがあるのはこのためです。

 一方、大腸菌をよい環境で培養すれば、いつまでも分裂を繰り返します。細菌には寿命がないのです。ここが、人間を含む「真核生物」(細胞内のDNAが膜に包まれた「核」を持つ)と、細菌などの「原核生物」(核を持たない)の大きな違いなのです。約38億年という生き物の歴史のなかで、約半分の20億年をかけて、真核生物が誕生しました。進化の時間の半分を使って、生き物は「死ぬこと」を発見したともいえます。

 この点、がんは、細菌と同じく「死ねない」細胞です。死ねない細胞が、私たちに望まぬ死をもたらすことになるのです。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

毎日新聞 2009年5月5日 東京朝刊

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